新潟地方裁判所長岡支部 平成8年(ワ)196号 判決 1999年12月13日
新潟県北魚沼郡守門村大字福田新田一八二番地
本訴原告(反訴被告)
株式会社諸長商店
右代表者代表取締役
諸橋勤
本訴原告
その余の本訴原告らは別紙本訴原告目録記載のとおり
右一一名訴訟代理人弁護士
畑七起
群馬県桐生市小曽根町八番三一号
本訴被告(反訴原告)
有限会社両毛米穀
右代表者代表取締役
小森谷善一
群馬県新田郡笠懸町大字阿左美九四五番地四
本訴被告(反訴原告)
小森谷善一
群馬県桐生市広沢町四丁目一九七四番地一九
本訴被告(反訴原告)
小森谷義則
右三名訴訟代理人弁護士
小室貴司
主文
一 本訴被告らは連帯して、本訴原告株式会社諸長商店に対し金三三七万二三二六円、その余の本訴原告らに対しそれぞれ金三〇万円を支払うとともに、本訴被告小森谷善一及び同小森谷義則は、右各金員に対する平成八年九月一一日から、本訴被告有限会社両毛米穀は、右各金員に対する同月二二日から、それぞれ支払済みまで、各自年五分の割合による金員を支払え。
二 本訴原告株式会社諸長商店のその余の請求及び反訴原告らの各請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、これを一〇分し、その三を本訴原告株式会社諸長商店の負担とし、その余を本訴被告らの連帯負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 請求の趣旨
一 本訴事件
本訴原告株式会社諸長商店の本訴被告らに対する請求額が金七四三万三四一〇円であるほかは、主文第一項と同じ。
二 反訴事件
1 反訴被告は、反訴原告有限会社両毛米穀に対し金一〇〇万円、その余の反訴原告らに対しそれぞれ金五〇万円を支払え。
2 反訴被告は、反訴原告らに対し、別紙謝罪広告目録記載の広告文を毎日新聞群馬版、朝日新聞群馬版、東京新聞群馬版、上毛新聞の各朝刊にそれぞれ掲載せよ。
第二 事案の概要
一 はじめに
本訴事件は、新潟県の米穀販売業者(株式会社諸長商店)が、提携する生産農家らに魚沼六日町産のコシヒカリをつくらせ、その生産農家らの顔写真入りの米袋に入れて販売していたところ、これと同じ米袋を、群馬県の米穀販売業者(有限会社両毛米穀)が勝手に使用し、表示と異なる内容の米を詰めて販売したことにより損害を受けたと主張して、有限会社両毛米穀及びその経営者らに対し、株式会社諸長商店が、不正競争防止法四条(混同惹起、誤認惹起)又は民法の不法行為(商道徳無視)に基づき、生産農家らが、肖像権侵害による民法の不法行為に基づき、それぞれ損害賠償を請求する事案である。
反訴事件は、有限会社両毛米穀とその経営者らは、米袋販売業者(被告知人のむら産業株式会社)の営業担当者を通じるなどして、株式会社諸長商店からその米袋に同社から購入した魚沼産コシヒカリを詰め販売する承諾を得ているのに、無断で表示と異なる偽米を詰め販売したとして本訴事件を提起され、これにより虚偽の報道がなされ、信用名誉を毀損されたなどと主張して、民法の不法行為に基づき損害賠償(金銭及び謝罪広告)を請求する事案である。
二 争いのない事実等
1 本訴原告株式会社諸長商店の米袋の表示等
本訴原告(反訴被告)株式会社諸長商店(以下、本訴反訴を通じ「原告諸長商店」という。)は新潟県の米穀販売業者であり、その余の本訴原告ら(以下「原告生産農家ら」という。)は新潟県南魚沼郡六日町の米の生産農家一〇名である(以上の当事者を総称して、以下「原告ら」という。)。
原告諸長商店は、平成六年以降、原告生産農家らと提携のうえ、その顔写真入りの五キログラム入り米袋(甲二の一、二。以下「本件原告米袋」という。)を使用して米を販売している。
本件原告米袋の表示は、概ね以下のとおりである。
袋の表 原告生産農家ら一〇名の顔写真と氏名
「私たちが作りました 有機特別栽培米 新潟県六日町産 こしひかり」の文字
「魚沼産」「日本一六日町産コシヒカリ」「日本一魚沼産コシヒカリ」の文字
天日干しの稲架(ハザ)の写真
袋の裏 栽培基準の記載
栽培責任者欄に嶋田長治の氏名・住所の記載
集荷責任者欄に「株式会社諸長商店」及び住所の記載
販売業者欄は空欄
(本件被告米袋に記載されている検定機関の記載はない。)
(甲二の一、二、原告諸長商店代表者三頁以下)
2 本訴被告有限会社両毛米穀の米袋の表示等
本訴被告(反訴原告)有限会社両毛米穀(以下、本訴反訴を通じ「被告両毛米穀」という。)は群馬県の米穀販売業者であり、本訴被告(反訴原告)小森谷善一(以下「被告善一」という。)及び同小森谷義則(以下「被告義則」という。)は、それぞれ被告両毛米穀の取締役として、同会社の経営に共同して従事している(以上の当事者を総称して、以下「被告ら」という。)。
被告両毛米穀は、平成七年春から平成八年初夏までの間、顔写真入りの五キログラム入り米袋(甲一の一、二。以下「本件被告米袋」という。)を使用して、米を販売した。
本件被告米袋の表示は、概ね以下のとおりである。
袋の表 原告生産農家ら一〇名の顔写真と氏名
「私たちが作りました 有機特別栽培米 新潟県六日町産 こしひかり」の文字
「魚沼産」「日本一六日町産コシヒカリ」「日本一魚沼産コシヒカリ」の文字
天日干しの稲架(ハザ)の写真
(いずれも本件原告米袋と全く同一)
袋の裏 検定機関欄に「(株)日本穀物検定協会」の記載
栽培基準の記載(本件原告米袋と全く同一)
栽培責任者欄に嶋田長治の氏名・住所の記載(本件原告米袋と全く同一)
集荷責任者欄に「合資会社諸長商店」及び住所の記載(住所につき、本件原告米袋と同一)
販売業者欄に被告両毛米穀の氏名・住所の記載
(甲一の一、二、被告義則一頁以下)
三 当事者の主張等(【 】内はいずれも反対当事者からの反論を示す。)
1 本訴事件
(一) 原告諸長商店の主張
(1) 不正競争
<1> 混同惹起行為(不正競争防止法二条一項一号)
i 周知性
本件原告米袋は、新潟県内を訪れる観光客に販売されるほか、全国有名百貨店で販売され、テレビ報道もされており、「原告生産農家らが生産し、諸長商店が集荷した六日町産有機栽培コシヒカリ」という表示は、被告両毛米穀の周辺地域でも需要者の間に広く認識されていた。
即ち、本件原告米袋は東京経済圏の消費者に広く販売され、また、取引者たる周辺の米穀業者にも多く販売されている。
【本件原告米袋の表示の意味は、著名な魚沼産コシヒカリであって、六日町産とか一〇人の農家の表示は消費者が購入する動機にはならない。本件原告米袋による商品は生産量が少なく、周知性がない。】
ⅱ 混同惹起
本件原告米袋と本件被告米袋(本件被告米袋の数量は後記<3>iのとおり三九三〇袋である。)は、ともに「原告生産農家らが生産し、諸長商店が集荷した六日町産有機栽培コシヒカリ」と表示されている点で商品主体の表示が同じで、原告諸長商店と被告両毛米穀とは同業種である。
本件被告米袋の商品を販売することは、本件原告米袋との関係で、消費者及び取引者の間で、商品主体につき混同を生じさせるものである。
【消費者は、本件原告米袋の商品を魚沼産コシヒカリとしか認識しないのだから、商品主体につき混同の生じる余地はない。】
<2> 誤認惹起行為(不正競争防止法二条一項一〇号)
被告らが販売した前記二2の米(その数量は後記<3>iのとおり三九三〇袋(五キログラム入り)である。)は、その銘柄が明らかでなく、「原告生産農家らが生産し、諸長商店が集荷した六日町産有機栽培コシヒカリ」との表示とは明らかに異なり、本件被告米袋の表示は需要者に誤認させるようなものである。
【被告らが販売した米の銘柄は原告諸長商店のダミーの同族会社である有限会社魚沼商事(以下「魚沼商事」という。)から購入した魚沼産コシヒカリ一等米である。消費者は著名な魚沼産コシヒカリであるから購入するのであって、六日町産とか一〇人の農家の表示は著名なものでもないから、本件被告米袋の表示と異なる内容の偽米とはいえない。】
<3> 原告諸長商店の損害 合計七四三万三四一〇円
i 不正競争防止法五条一項による推定損害額 六四三万三四一〇円
被告両毛米穀の本件被告米袋の商品による販売利益の額は、原告諸長商店の営業上の利益の侵害による損害額と推定される。
被告らの販売した米の銘柄は不明だが、その仕入価格は、同時に販売した商品「こしひかり」「新潟一〇〇%こしひかり」「新潟米」の販売価格平均一八六三円(五キログラム当たり)を上まわることはない。また、販売価格は三五〇〇円(五キログラム当たり)である。
被告らの本件被告米袋の使用数量については、注文量、返品した数量等から推定すれば、合計三九三〇袋であるといえるので、右販売価格三五〇〇円から右価格平均一八六三円を引いた差額(利益推定額)に右使用数量を掛けると、六四三万三四一〇円となる。
(計算式)
(3500-1863)×3930=643万3410円
販売価格 仕入価格 販売数量 販売利益
仮に被告らの販売した米に係る右主張が認められないとしても、民事訴訟法二四八条により相当な損害額が認定されるべきである。
【原告諸長商店と被告両毛米穀とは販売地域が相違し、競争関係にないから、営業上の損害が発生する余地はなく、推定の根拠がない。また、米袋の表示ではなく、永年の信用と営業努力により販売したのであって、本件被告米袋の表示の顧客吸引力によるものではない。
被告らが原告諸長商店から購入して販売した魚沼産コシヒカリ一等米の購入価格は、平成六年一二月一三日購入のものは二四五〇円、平成七年一〇月一二日購入のものは二九六五円、平成八年六月六日購入のものは二八九八円(いずれも五キログラム当たり)であるから、いずれも仕入価格は原告主張よりも高い。また、平成六年一二月一三日購入のものは、三〇〇〇円で販売した。】
ⅱ 弁護士費用 一〇〇万円
<4> 被告らの責任
前記二2のとおり、被告善一と被告義則は、そ一れぞれ被告両毛米穀の取締役として、同会社の経営に共同して従事しているのだから、被告らは連帯して、混同惹起又は誤認惹起という不正な競争につき、不正競争防止法四条及び民法により、原告諸長商店に対し、前記<3>の損害を賠償する責任がある。
(2) 不法行為(商道徳無視)((1)に対し予備的)
<1> 違法行為による法益侵害
被告両毛米穀は、原告諸長商店の名義が記載され、本件原告米袋と同じ内容を持つ本件被告米袋を使って、前記二2のとおり、表示とは全く異なる内容の偽米を販売した(その数量は前記(1)<3>iのとおり三九三〇袋(五キログラム入り)である。)。
本件原告米袋が意匠登録されておらず、前記(1)の不正競争の諸条件を満たさないとしても、被告らの行為は違法に原告諸長商店の営業利益を侵害する。すなわち被告らの商道徳を無視する行為により、群馬県内の他の米穀販売業者や消費者らから、原告諸長商店が被告らと相通じて、偽米を販売したとの抗議を受け、営業上マイナスとなった。
<2> 原告諸長商店の損害
法人の無形損害 七四三万三四一〇円
なお、右損害額につき、民事訴訟法二四八条の規定が考慮されるべきである。
<3> 被告らの責任
前記二2のとおり、被告善一と被告義則は、それぞれ被告両毛米穀の取締役として、同会社の経営に共同して従事しているのだから、被告らは連帯して、予備的に、商道徳を無視する行為につき、民法により、前記<2>の損害を賠償する責任が存する。
(二) 原告生産農家らの主張
(1) 肖像権侵害
<1> 原告生産農家らの顔写真入りの本件被告米袋を使用した前記二2の被告らの米の販売(その数量は前記(一)(1)<3>iのとおり三九三〇袋(五キログラム入り)である。)は、原告生産農家らの肖像権を侵害するものである。
右販売の際、本件被告米袋の原告生産農家らの顔写真が、チラシにも印刷されて多数頒布された。
【写真を米袋業者が合成編集しているので、原告生産農家らには権利がない。また、原告生産農家らは、米袋が最終的にゴミとして焼却されることを前提に写真掲載に応じている。顔写真は親近感を持たせるためで、それ自体に意味はなく、肖像権として保護する理由を欠く。】
<2> 被告両毛米穀は、平成八年五月二三日発行の業界紙「商経アドバイス」に、「顔の見える関係を推進」等と称して、原告生産農家らの顔写真入りの本件被告米袋を掲載させた。
【掲載させておらず、マスコミの独自の報道活動に過ぎない。】
(2) 原告生産農家らの損害 各自三〇万円
真摯に米づくりに励んでいる原告生産農家らが、被告らから顔写真入りの多数の米袋に偽米を詰めて販売され、チラシも頒布され、業界紙にも掲載され、筆舌に尽くしがたい屈辱を味わったことに対する慰謝料としては、各自三〇万円が相当である。
なお、右損害額につき、民事訴訟法二四八条の規定が考慮されるべきである。
【被告らが販売した銘柄は魚沼商事から購入した魚沼産コシヒカリ一等米であって、偽米とはいえない。】
(3) 前記二2のとおり、被告善一と被告義則は、それぞれ被告両毛米穀の取締役として、同会社の経営に共同して従事しているのだから、被告らは連帯して、肖像権侵害行為につき、民法により、原告生産農家らに対し前記(2)の損害を賠償する責任が存する。
(三) 被告らの主張
(1) 承諾(原告らの各請求に対し)
被告両毛米穀は、平成七年一月ころ、訴外米袋販売業者(被告知人のむら産業株式会社)の営業担当者から、本件原告米袋を利用して魚沼産コシヒカリを宣伝して販売量を増やしてはどうかと勧められたので、原告諸長商店から使用の承諾をとるよう依頼したところ、同年二月八日ころ、右営業担当者が、承諾を得た旨電話してきたので、翌日、被告義則が原告諸長商店に電話で連絡し、本件原告米袋を使用すること及び魚沼産コシヒカリを詰めて販売することを承諾する旨を直接確認した。
【承諾の事実はない。同年三月はじめころ、右営業担当者が、被告義則から、被告両毛米穀が原告諸長商店から米を仕入れることになり、本件原告米袋を使用しても良いとの話を聞いた結果、本件被告米袋の製作を受注しただけである。】
(2) 保護法益の欠缺(原告諸長商店の請求に対し)
本件原告米袋には次のとおり不正競争防止法上の保護を受けるべき法益が欠けている。
<1> 架空検定機関表示及び右検定機関の認証制度違反
本件原告米袋には「株式会社日本穀物検定協会」という架空の検定機関の表示があり、正しくは財団法人日本穀物検定協会である。右認証制度の下では産地は新潟県で品種は魚沼産コシヒカリである。
【甲二の一、二のとおりの内容の米袋を従来も現在も使用している。】
<2> 原告諸長商店の偽米販売
本件原告米袋の枚数から推定される販売数量は、原告生産農家らの生産量より多いから、原告諸長商店は元来一部偽米を詰めて販売している。
【販売数量と生産量との齟齬は存在しない。】
<3> 食糧管理法等の違反
旧食糧管理法下では、政府米以外の米の小売り販売自体が許されない違法行為であり、新食糧法下では、原告生産農家らが食糧事務所に届出をしておらず、原告諸長商店は小売業の登録を有していても、右届出がない状況では県外はもちろんのこと、県内でも小売販売は許されない。
【確かに、原告諸長商店は卸売の免許を取得しておらず、新食糧法下での原告生産農家らの食糧事務所への届出はないが、魚沼商事から卸売りを受け、原告生産農家らの肖像権を侵害している被告両毛米穀は、信義則上、原告諸長商店の販売の違法性を主張することはできず、右届出の欠缺も主張できない。そもそもは裁判所の職権事項であるが、本訴請求は食糧管理法等の違反と関係がない。旧食糧管理法は平成六年当時形骸化していた。】
<4> その他
原告生産農家らが生産した六日町産コシヒカリとの表示は周知ではなく、品質としても定着していないから保護に値しない。有機特別栽培米との表示にも虚偽がある。原告生産農家らは、不正競争防止法が適用されるべき「営業者」ではない。
【本件原告米袋の裏面の表示どおりに栽培しており、有機特別栽培米である。その余の被告らの主張は争う。】
2 反訴事件
(一) 被告らの主張
(1) 信用名誉の毀損
<1> 被告らは、原告諸長商店から、本件被告米袋の使用及びこれに魚沼産コシヒカリを詰めて販売することにつき、承諾を得ており、また、右米袋の表示と内容の点で異なるものではない。
にもかかわらず、原告諸長商店は、敢えて本訴事件を提起し、被告らが「魚沼産コシヒカリ以外の米を、あたかも魚沼産コシヒカリのように装って無断で販売した。」との事実を主張した。
【原告諸長商店は、原告生産農家らが生産し、原告諸長商店が集荷した六日町産有機栽培コシヒカリではない単なる魚沼産コシヒカリを、本件被告米袋に詰めて販売してもよいなどと承諾していないし、単なる魚沼産コシヒカリが本件被告米袋の表示と異なる内容の米であることは明らかである。
原告諸長商店は、本訴事件において「原告生産農家らが生産し、諸長商店が集荷した六日町産有機栽培コシヒカリ」という表示につき、これと異なる米を被告らが販売した旨主張している。】
<2> <1>のため、報道機関は、本訴事件を「偽米」の問題に重点を置いて報道した。この報道は原告諸長商店への取材の上でなされている。
【報道機関の取材源は不知。】
<3> <2>により、被告両毛米穀は地域の信用を失い、得意先からの取引中止等により売上高が激減した。被告善一及び被告義則は犯罪者扱いされ、名誉が毀損された。
(2) 被告らの損害
<1> 被告両毛米穀の損害 一〇〇万円
前三年度平均に比較して売上高は平成八年度に一一一〇万円も減少したので、少なくとも信用毀損による損害は一〇〇万円を下らない。
<2> 被告善一、被告義則の損害 各自五〇万円
地域社会の人々より詐欺犯罪者のようにみられ、所属するライオンズクラブからの退会の圧力を受けたことなどに対する慰謝料としては、各自五〇万円が相当である。
(3) 以上のとおり、原告諸長商店は、信用名誉の毀損につき、民法により、被告両毛米穀に対し前記(2)<1>の、被告善一、被告義則に対し前記(2)<2>の損害をそれぞれ金銭で賠償し、被告らに対し別紙謝罪広告目録記載の広告文を掲載する責任が存する。
第三 争点
1 本件原告米袋及び本件被告米袋の表示の意味
2 本件原告米袋の表示の周知性、混同惹起性
3 被告両毛米穀は本件被告米袋にどのような米を詰めたか
4 3の詰めた米は本件被告米袋の表示と異なる内容の米といえるか
5 原告諸長商店が本件被告米袋に魚沼産コシヒカリを入れて販売することを承諾したか
6 本件原告米袋に保護法益が欠缺しているか
7 原告生産農家らの肖像権が侵害されたか
8 被告らの信用名誉毀損の有無
9 認容すべき損害額の有無等
第四 争点に対する判断
一 前提事実
関係各証拠によれば、次の事実が認められる。
1 原告諸長商店及び被告両毛米穀
(一) 原告諸長商店は新潟県北魚沼郡にある米穀の集荷商であり、農家より米を集め、関東地方その他の小売商に卸す業務を行うほか、直売りや宅配も行っており、年商は二六億円程度で、同様の業種の関連会社である魚沼商事を含めると年商の合計は六〇億円程度であり、従業員は三〇名程度である。
(乙七の一、二、乙八の一、二、乙九の一、二、乙一〇の一、二、原告諸長商店代表者一頁以下、同七五頁以下)
(二) 被告両毛米穀は群馬県桐生市にある米穀の小売商で、同市内に三店舗、隣接する同県新田郡笠懸町に一店舗を持ち、年商は八億円程度で、従業員は一五名程度である。
(乙三二の一ないし三、被告義則本人二三頁以下、同三一頁以下)
2 原告諸長商店と原告生産農家らとの生産提携
(一) 原告諸長商店は、平成五年秋ころから原告生産農家らと話し合い、本件原告米袋の裏に記載された内容の特別な栽培基準の下で右農家らに魚沼産コシヒカリを生産してもらい、本件原告米袋に原告生産農家らの顔写真を記載して、栽培責任者としては原告嶋田長治の氏名住所を、集荷責任者として原告諸長商店の名義、本店所在地及び電話番号をそれぞれ明記して右コシヒカリを詰め、販売業者の欄は空白とし、卸す販売業者には業者名を記載したシールを貼ることとする手法を決めた。
(甲二の一、二、甲九、証人清川悦男三七頁以下、原告諸長商店代表者三頁以下)
(二) 原告生産農家らは、右栽培基準(ポットで育成した苗を植える、完熟堆肥を毎年十分に使用する、有機現物量割合及び有機由来の窒素割合をともに五〇パーセント以上の多木の有機肥料を使用する、原則として薬剤に頼らず病害虫対策をするなど)を守り、別表一のとおりの量のコシヒカリ(以下「本件コシヒカリ」という。)を生産した。
(甲二の一、二、甲九ないし一一、原告諸長商店代表者四頁以下、三九頁以下)
3 原告諸長商店の本件原告米袋による販売
(一) 原告諸長商店は、本件コシヒカリを全て買い取り、別表二のとおりの量を東京都渋谷区の小売業者に卸売した。
右小売業者は、原告諸長商店の了解の下で、本件原告米袋を使用せずに、別の米袋に入れて販売したが、その使用する米袋(乙七の一、二)は、原告生産農家らの顔写真や氏名、栽培方法、原告諸長商店の表示がある点で、本件原告米袋の表示と類似している。
(甲一三、乙七の一、二、原告諸長商店代表者四五頁以下、七七頁以下)
(二) 原告諸長商店は、平成七年一月以降、前記生産量(別表一)から右小売業者に卸す量(別表二)を除いた本件コシヒカリ(その量は別表三のとおり)を、自ら精米し、前記2の手法のとおり、本件原告米袋に詰めて販売してもらうことを条件として、群馬県、静岡県、埼玉県、栃木県の各米穀商に卸売し、その余の毎月二、三トン程度を直売り又は宅配売りで販売した。
ところで、被告両毛米穀は前記2の原告生産農家らが特別な栽培基準の下で生産した本件コシヒカリを原告諸長商店から仕入れたことがない。
(甲一二、乙八の一、二、乙九の一、二、乙一〇の一、二、原告諸長商店代表者二二頁以下、同四五頁以下、同七七頁以下、被告義則二九頁以下)
(三) なお、本件原告米袋の作成の経緯は、前記2のとおりの原告生産農家らとの提携の動きを受けて、原告諸長商店代表者が、訴外米袋販売業者である被告知人のむら産業株式会社(以下「のむら産業」という。)の営業担当者清川悦男(以下「清川」という。)に漫画で図案を見せて注文し、これを受けて版下が作成され、原告諸長商店の確認を受け、本件原告米袋が製作されたというものである。
原告諸長商店が、のむら産業から購入した本件原告米袋の枚数は、別表四のとおりである。本件原告米袋製作の際には、最低の印刷単位が一ロットで四〇〇〇メートル、袋に裁断すると八五〇〇枚分であって、これから印刷ミスをしたものを取り除くと実際の入荷枚数は八千二、三百枚となる。これより枚数を追加する場合は、印刷と製袋の機械の仕組みの関係から、六〇〇〇メートル(一万二七五〇枚分)の注文になる。
(甲一二、証人清川四頁以下、同一八頁以下、原告諸長商店代表者七頁以下、同三八頁以下)
4 被告両毛米穀の本件被告米袋による販売
(一) 被告両毛米穀は、平成六年一二月初旬ころ、東京都千代田区所在の米穀仲介業者の情報提供サービスを利用して、原告諸長商店から新潟産コシヒカリを購入できることを知り、同月一三日、原告諸長商店の関連会社である魚沼商事から「コシヒカリ魚沼一等」玄米一万〇二〇〇キログラム(白米換算九一八〇キログラム)を代金四五〇万五〇〇〇円で買い受けた(別表五のとおり)。
(乙二の一ないし三、乙二〇、被告義則本人三一頁以下)
(二) 平成七年一月末ころ、のむら産業の新潟県及び群馬県担当であった清川は、被告両毛米穀を訪問した際、被告義則との間で、被告両毛米穀が購入した「コシヒカリ魚沼一等」玄米の販売促進のために使用する米袋がないかとの話が出たので、本件原告米袋を持参した。
被告義則は、被告両毛米穀としては、魚沼商事から購入した魚沼産コシヒカリ一等米を本件原告米袋に詰めて販売しても良いと考え、清川に、本件原告米袋に似せて本件被告米袋を作成するように依頼した(あらかじめ原告諸長商店から詰めて良いとの承諾を得たかについては、争いがある。)。
清川は、平成七年三月三日、本件被告米袋約八五〇〇枚の製作を被告両毛米穀より受注し、図案を作成のうえ、同年四月初旬ころ、少なくとも八二〇〇枚を納入した。
被告両毛米穀は、同年四月初旬以降、本件被告米袋に米を詰め(どのような米を詰め、幾らで販売したかについては、争いがある。)、群馬県桐生市周辺地域の消費者に販売した。
(甲三、六の一、二、証人清川二頁以下、同二九頁以下、被告義則本人二頁以下、同二九頁以下、同四五頁以下)
(三) 被告両毛米穀は、平成七年一〇月一二日、魚沼商事から、「コシヒカリ魚沼一等」玄米七二〇〇キログラム(白米換算六四八〇キログラム)を代金三八四万円で買い受けた(別表五のとおり)。
被告両毛米穀は、群馬県新田郡笠懸町に集中精米工場を新設し、平成八年四月二三日、その披露パーティーを行った。その際、米穀業界紙「商経アドバイス」の記者が取材を行い、同年五月二三日発行の同紙(乙五)には、「食味へのこだわりは確かなコメとしての一番のアピール点」と語る被告善一のコメントや同人及び被告義則の顔写真のほか、被告両毛米穀は「お取引」から踏み込んだ「ご相談と取り組み」を方針とすることや、顔の見える関係を推進するための本件被告米袋の写真(原告生産農家らの顔写真が判別できる。)が掲載された。
被告両毛米穀は、平成八年春ころ、新工場落成記念として、本件被告米袋に米を詰め(どのような米を詰めたかは、争いがある。)、五キログラム三五〇〇円で群馬県桐生市周辺地域の消費者に販売した。
この際、被告両毛米穀は、取扱い商品全般の販売促進のため、二回(隔月)にわたり、一回あたり約二〇〇〇枚のチラシ(甲四、五)を周辺地域に配布したが、このチラシには、「有機栽培米」「産地提携の直送米です!!」「私たちが作りました」との文字、栽培責任者として嶋田長治の氏名・住所の記載、原告生産農家ら一〇名の顔写真と氏名、「新潟県六日町魚沼産こしひかり」との文字等の記載がある。なお、甲五のチラシは平成八年五月三〇日ころに配布された。
(甲四、五、乙三の一ないし三、乙五、被告義則本人四九頁以下)
5 原告諸長商店と被告両毛米穀との紛争の発生等
(一) 原告諸長商店の代表者は、平成八年五月下旬ころに、前記4(三)の「商経アドバイス」の記事の内容を知った。
被告義則は、同月二九日、のむら産業の清川とともに原告諸長商店の店舗を訪れ、原告諸長商店代表者と会った。この際、前記4(三)の「商経アドバイス」の記事が話題に出たが、被告義則は魚沼の米の注文をし、原告諸長商店はこれに応じた。
被告両毛米穀は、同年六月六日、魚沼商事から、「コシヒカリ魚沼一等」玄米八一六〇キログラム(白米換算七三四四キログラム)を代金四二五万六八〇〇円で直接買い受けた(別表五のとおり)。
(乙四の一ないし三、証人清川二〇頁以下、原告諸長商店代表者一三頁以下、被告義則本人一三頁以下、弁論の全趣旨)
(二) 原告諸長商店は、平成八年六月ころ、群馬県消費生活センターから、本件被告米袋の表示につき、「取引が原告諸長商店と被告両毛米穀の間にないのに、このような表示をしてよいのか。特別栽培米かどうか不審だ。」との相談があった旨連絡を受け、これを問題とした原告諸長商店の代表者は、同月一二日、被告両毛米穀に苦情の電話をかけ、被告善一がこれに応じた。
この問題を話し合うため、被告善一は、同月二八日、のむら産業の清川と待ち合わせをして、一緒に原告諸長商店の店舗を訪れることとしたが、結局、被告善一は、清川を伴わず、同日午前一一時ころ、同店舗を訪れ、原告諸長商店の代表者らと話し合ったが、結論はでなかった。清川は同日午後一時過ぎに同店舗を訪れた。
被告両毛米穀は、同年七月一日、のむら産業に対し、使用しなかった本件被告米袋四二七〇枚を返却のため発送した。
(甲七の一、二、乙四五、乙四八ないし五一、乙五二の一、二、証人清川二二頁以下、原告諸長商店代表者一五頁以下、同六三頁以下、同六八頁以下、被告善一(平成一一年一月二七日実施)一三頁以下、同(同年三月三日実施)一頁以下、同二四頁以下)
二 当裁判所の判断
1 本件原告米袋及び本件被告米袋の表示の意味(争点1)
本件原告米袋及び本件被告米袋の表示は、前記第二、二1、2のとおりであって、いずれも原告生産農家ら一〇名の顔写真と氏名や新潟県六日町産コシヒカリなどの文字の記載がある。これとは別に、栽培方法の詳細な記載もあって、日常よく目にする一般の米袋の表示とはかなり異なる。
これらの各記載を見れば、米を生産した人物が原告生産農家らであること、原告生産農家らが実名と顔写真を敢えて公開することにより、その品質の高さ、製造の際の真摯な取組みを訴えかける商品であること、産地は新潟県の六日町という場所であることなどを、米の取引者や消費者が強く印象づけられて認識するものと認められる。
従って、本件原告米袋や本件被告米袋につき、通常、それらが生産農家らの表示のない一般の魚沼産コシヒカリと同一内容のものと認識されるのではなく、一〇人の農家の表示が需要者の購入動機になると推認されるものであって、六日町との町名も、新潟県魚沼地方に所在する町の名前であることは併記されている「日本一魚沼産コシヒカリ」から連想されるにせよ、大きく記載されている産地の地名「六日町」自体を観察し、原告生産農家らに主たる関心を持つであろうことは明らかである。
右認定事実によると、本件原告米袋は、不正競争防止法二条一項一号の「他人の商品等表示」である「商品の容器若しくは包装」に該当し、これを客観的に観察すれば、原告生産農家らが生産し、諸長商店が集荷したとの表示を持つ商品であって、本件被告米袋は、同項一〇号にいう「原産地、品質、内容、製造方法」につき、新潟県六日町で生産され、原告生産農家らが袋記載の栽培基準に従って生産した性質、実質、属性を持つコシヒカリであるとの表示を持つ商品であると判断される。
2 本件原告米袋の表示の周知性、混同惹起性(争点2)
まず、本件原告米袋の表示に関し、前記一(前提事実)に関係証拠を総合しても、被告両毛米穀の所在する群馬県桐生市周辺における消費者の間での周知性は認められない。
本件原告米袋がいわば「顔の見える」商品で、有機特別栽培米と銘打っており、産地直結の食味を指向する特有の購買層の関心を引くべき表示となってはいるものの、前記一3(二)及び別表三のとおりの生産量や販売状況等では、平成七年一月以降、平成八年六月ころまでの期間において、右地域周辺に限定した購買層に十分浸透したとは認められないからである。
次に、本件原告米袋の表示につき、関東地域及びその周辺における米穀商の間における周知性も、これを認めるには足りず、他にこれを認める証拠はない。確かに、本件原告米袋は前記1のような特異な表示であって、産地直結の食味を指向する近時の消費者層の需要に敏感な専門業者の関心を引くべきものであることや、前記一3(二)及び別表三のとおりの生産量や販売状況等、さらには原告諸長商店の前記一(一)のとおりの営業規模等を考慮すれば、専門業者を媒介する米袋業者等を通じ、本件原告米袋が容易に周知性を獲得する可能性があるとも言い得るが、そのような可能性を十分に考慮したとしても、本件原告米袋に関する宣伝状況等も具体的に明らかではない前記一(前提事実)の下では、いまだ周知性を獲得したとは言い難い。
よって、本件原告米袋と本件被告米袋との表示の混同惹起を検討する必要はないと判断される。
3 被告両毛米穀は本件被告米袋にどのような米を詰めたか(争点3)
被告両毛米穀は、前記一4(一)、(三)のとおり、魚沼商事から「コシヒカリ魚沼一等」玄米を購入しているのであって、その購入時期と前記一4(二)のとおりの本件被告米袋の購入時期とのずれを考慮し、同(二)のような本件被告米袋の作成の経緯に照らせば、右玄米を自ら精米した「コシヒカリ魚沼一等」白米を本件被告米袋に詰めたものと見るのが素直で合理的である。
ただ、前記一4(三)のチラシ(甲五)の配布時期や同一5の紛争の発生の経緯を子細に検討すると、チラシ(甲五)で宣伝する本件被告米袋に詰める米は、チラシ配布前に十分な在庫が確保されている筈で、ある程度の在庫を踏まえたうえで追加の玄米の発注(平成八年五月二九日)がなされたであろうことや、別表五のとおりの購入の間隔から想定される在庫減少の速度等に照らせば、被告両毛米穀は、同年六月六日ころの時点でも、魚沼商事から従前(平成七年一〇月)に購入した「コシヒカリ魚沼一等」玄米全量をまだ販売し切っていなかったものと推認される。
他方で、前記一5(二)のとおり、新たな「コシヒカリ魚沼一等」玄米が平成八年六月六日購入されたものの、同月一二日には原告諸長商店から苦情の電話があり、同月二八日には直接話し合って、翌七月一日には本件被告米袋が返却されているのであるから、結局、平成八年六月六日購入の「コシヒカリ魚沼一等」玄米八一六〇キログラムは、本件被告米袋に詰められることはなかったものと推認される。
そして、前記一5(二)認定のとおりの紛争の経緯に照らせば、被告両毛米穀は余分な本件被告米袋を残さずに全て返却したものと考えられるから、被告両毛米穀が実際に使用した本件被告米袋の数量は、納入を受けた数量(前記一4(二)、少なくとも八二〇〇枚)から返却数量(前記一5(二)、四二七〇枚)を引いた三九三〇袋であるものと認められる(なお、袋の破損により使用が不可能となる数量は、一ロットと右八二〇〇枚との差の大きさや、本件被告米袋の材質等(証人清川悦男一八頁以下)から想定される破損の困難性からすると、納入を受けた実際の数量「少なくとも八二〇〇枚」の中に含まれないというべきである。)。
ならば、被告両毛米穀が実際に使用した本件被告米袋三九三〇袋(白米換算一万九六五〇キログラム)と実際に詰めた「コシヒカリ魚沼一等」玄米の数量(平成六、七年購入分の白米換算合計一万五六六〇キログラム)との間には、明白な齟齬が存在するというべきで、被告両毛米穀は、数量の不足分三九九〇キログラムについては、本件被告米袋に「コシヒカリ魚沼一等」以外の米を詰めたものと見るほかなく、前記一4の事情を総合すれば、同時期に販売された米でチラシ(甲四、五)の上で最も関連性の認められる「コシヒカリ」「新潟一〇〇%コシヒカリ」「新潟米」(このうちのどれかは特定できない。)を詰めたものと認定すべきである。
4 詰めた米は本件被告米袋の表示と異なる内容の米といえるか(争点4)
本件被告米袋の表示の意味については、新潟県六日町で生産され、原告生産農家らが袋記載の栽培基準に従って生産した性質、実質、属性を持つコシヒカリであることは、前記1で既に述べたとおりである。
他方で、被告両毛米穀が、本件被告米袋の内容として、平成七年四月初旬以降、平成八年六月ころまで販売した米は、終始一貫して、原告生産農家らが袋記載の栽培基準に従って生産した性質、実質、属性を持つコシヒカリすなわち本件コシヒカリではない。このことは前記一3(二)で認定したとおりであって、被告義則及び被告善一もこれを認めている。
そして、実際に詰めた米は、全体の約八割が新潟県魚沼産コシヒカリ一等米で、残りの約二割が産地を特定しないコシヒカリか、新潟産コシヒカリか、新潟産の品種を特定しない米のどれかである(前記3のとおり)。
即ち、被告両毛米穀は、全体の約八割につき、栽培主が誰であるか、どのような栽培方法であるかにつき真実と反し、産地につきより広域であるべきものを狭い地域に詐って限定して、残りの約二割につき、産地及び品種につき齟齬することを隠して、本件被告米袋の表示と異なる内容の米を販売したのであって、前記一4(三)のチラシ(甲四、五)において栽培主や産地提携を喧伝する販売方法等にも照らせば、本件被告米袋の表示が、平成七年四月の販売開始の当初から、米の消費者、取引者に原産地、品質、内容、製造方法を誤って認識させるような表示であることは明らかである。
5 原告諸長商店の被告両毛米穀に対する承諾の有無(争点5)
被告義則が、魚沼商事から購入した魚沼産コシヒカリ一等米を本件原告米袋に似せた本件被告米袋に詰めて販売しても良いと考えていたことは、前記一4(二)のとおりであって、それ故、被告義則は、前記第二、三1(三)(1)で主張するとおり、のむら産業の清川に原告諸長商店の承諾をとるよう依頼し、直接原告諸長商店に電話をかけ、確認をしたなどと供述し、被告善一もこれに沿った供述をしている。
しかし、原告諸長商店は、前記一2、3のとおり、原告生産農家らとの提携や、本件原告米袋による販売の工夫を通じ、本件原告米袋とその内容の米(本件コシヒカリ)の販売に多大な労力をかけているのであって、それ以外の魚沼産コシヒカリなどの米を詰めて、本件原告米袋を使用させるということは、原告生産農家らの同意なくして承諾できる道理はないし、消費者を欺く事柄に属するから、重大な事柄を電話一本で承諾し決定することは考え難く、原告諸長商店がこれを承諾すべき特別の事情が存したとも認められない。このことは、被告両毛米穀に関し、前記一3(二)のとおりの他の業者(乙八の一、二、乙九の一、二、乙一〇の一、二)に見られるようなシールを貼った米袋も存在しないことからも裏付けられる。原告諸長商店の代表者は承諾を否定し、証人清川も被告義則が主張する承諾の経緯があったとは証言していない。
このように被告義則や被告善一の右供述には客観的な裏付けがないばかりか、前記4のとおり、両名は表示と異なる内容の米を販売したと認められるのであって、両名の右供述にはおそよ信用性に乏しく、採用できない。
よって、原告諸長商店の被告両毛米穀に対する承諾の存在を認めることはできない。
6 本件原告米袋に保護法益が欠缺しているか(争点6)
被告ら主張に係る前記第二、三1(三)(2)<1>(架空検定機関表示及び右検定機関の認証制度)につき検討すると、本件原告米袋(甲二の一、二)には「株式会社日本穀物検定協会」との表示はなく、逆に本件被告米袋(甲一の一、二)には右表示がなされており、乙二一、五三によれば右協会が架空のものであると認められる。
被告義則及び被告善一は、従前の本件原告米袋にも同様な表示があったことを窺わせる供述をしているが、証人清川三五頁以下によれば、本件原告米袋は注文時には財団法人となっていた筈で、版下を作成する下請けのミスプリントであることが認められる。このことは、本件原告米袋が前記一3(三)のとおり正常な過程で作成されたことからも首肯しうることであって、そもそも前記5のとおり承諾を得ることなく作成され、前記4の許認惹起行為の手段となった本件被告米袋とは同列に論じられない。以上によれば、従前の本件原告米袋において架空表示が原告らの責任下でなされたものとは認め難い。
また、財団法人日本穀物検定協会の認証制度の下では、本件原告米袋の産地が新潟県で品種は魚沼産コシヒカリであるとしても、そのことから直ちに、「原告生産農家らが生産し、諸長商店が集荷した六日町産有機栽培コシヒカリ」という表示が不正競争防止法上の保護適格を失うわけでもない。
次に、被告ら主張に係る前記第二、三1(三)(2)<2>(原告諸長商店の偽米販売)につき検討すると、原告生産農家らの本件コシヒカリの生産量は前記一2(二)(別表一)のとおりであり、原告諸長商店が本件原告米袋を使用して卸売りなどした数量は同一3(二)(別表三)のとおりであって、他方、原告諸長商店が購入した本件原告米袋の枚数は同一3(三)(別表四)のとおりで、別表三と別表四の数量の間には、一見して齟齬が存在するかのようである。
しかしながら、別表四を子細に検討すれば、原告諸長商店は平成六、七、八年度分で毎年一ロットづつ購入しているに過ぎないのであって、これは前記一3(三)のとおり、最低の印刷単位であり、これ以上少ない枚数はそもそも購入が不可能であるとの事情から生じた齟齬と判断される。前記一(前提事実)及び本件関係証拠を総合すれば、本件原告米袋に関し、原告諸長商店が偽米を詰めたとは認められない。
さらに、被告ら主張に係る前記第二、三1(三)(2)<3>(食糧管理法等の違反)につき検討すると、原告諸長商店代表者九頁以下、三七頁以下によれば、平成六年当時、原告諸長商店には食糧管理法(昭和一七年二月二一日法律第四〇号、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成六年一二月一四日法律第一一三号、平成七年一一月一日施行)附則三条により廃止)八条の三第一項に定める米穀の卸売りの許可がなかったものの、食糧管理法八条の二に定める集荷業者の指定は受けていたことが認められ、前記一3の本件原告米袋による政府管理米以外の販売は「所有者の有償譲渡」に該当し、また、弁論の全趣旨によれば、原告生産農家らが主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律五条五項に定める計画外流通米の食糧事務所への届出をしていなかったことが認められる。
しかしながら、本件原告米袋を使用する原告諸長商店の私法上の取引は、右行政的取締法規に反する諸点を考慮しても、前記一(前提事実)に説示した原告諸長商店の従前からの営業態様、甲一〇、一一より認められる関係行政当局との関係、その他被告らが魚沼商事と取引していた経緯等の一切の事情を総合するならば、本件具体的事情の下において、少なくとも前記4の誤認惹起行為の認定との関係で、前記一3の本件原告米袋の販売が公序良俗に反し、私法上無効であって、不正競争防止法上の保護適格が失われるまでのものと断ずることはできないというべきである。
被告ら主張に係る前記第二、三1(三)(2)<4>(その他)につき検討すると、周知でない商品等表示でも法的保護に値することは明らかで、本件原告米袋に詰められた本件コシヒカリの品質が需要者に広く定着していなくとも同様である。有機特別栽培米との表示も、前記一2(二)のとおり、栽培当時の実態に即した相当なものというべきである。不正競争防止法上の「営業」とは、広く経済上その収支計算の上に立って行われる事業一般を指すものであるから、原告生産農家らのような農業従事者も、不正競争防止法上の「営業」の主体に該当する。
以上のとおりであって、結局、本件原告米袋に不正競争防止法上の保護法益が欠けるとの結論を採り得ないことは明白である。
7 原告生産農家らの肖像権が侵害されたか(争点7)
被告両毛米穀は、前記第二、二2のとおり、原告生産農家らの顔写真と氏名が記載された本件被告米袋三九三〇枚を販売し、前記一4(三)のとおり、同様のチラシ合計約四〇〇〇枚を配布したのであって、前記5のとおり、本件被告米袋への顔写真、氏名の記載につき何ら承諾を得ていないのであるから、原告生産農家らの肖像権を侵害したことは明らかである。
また、前記一4(三)のとおり、商経アドバイス(乙五)には被告善一のコメントや同人及び被告義則の顔写真が掲載されているのであって、商経アドバイスの関係者が同人らに取材し、同人らの顔写真を撮影或いは入手したと見るほかはないのであって、この点被告義則は言を左右に否定するが、到底信用できない。
ならば、前記一4(三)のとおりの商経アドバイス(乙五)の紙面の体裁からは、本件被告米袋の写真を掲載することにつき、被告善一及び被告義則の積極的関与(提供或いは同意)を推認することができるのであって、この点につき、被告らの肖像権侵害行為が認められる。
8 被告らの信用名誉毀損の有無(争点8)
前記4、5のとおり、被告らは原告諸長商店から本件被告米袋の使用及びこれに魚沼産コシヒカリを詰めて販売することにつき、何らの承諾を得ず、右米袋の表示と異なる内容の米を詰めて販売した事実が認められる。
そして、本訴事件において、原告諸長商店が「原告生産農家らが生産し、諸長商店が集荷した六日町産有機栽培コシヒカリ」との表示と異なる米を被告らが販売したと主張していることは、前記第二、三1(一)(1)<2>のとおり、当裁判所に顕著である。
よって、信用名誉毀損の点につき、原告諸長商店の責任を肯定することはできない。
9 認容すべき損害額等(争点9)
前記1ないし8によれば、被告らの主張に係る信用名誉毀損の責任(前記第二、三2)に関する損害額等については、検討する必要はない。
そこで、原告諸長商店主張に係る不正競争の責任(前記第二、三1(一)(1))につき、検討する。
前記一1のとおり、原告諸長商店と被告両毛米穀とは広い意味で米穀商として同業であり、前記一2、3のとおり、本件原告米袋の表示は、原告諸長商店のいわばプライベートブランドであって、独自の営業努力を伴うものである。
そして、前記1、3ないし6のとおり、被告両毛米穀につき、平成七年四月上旬以降、平成八年六月ころまでの本件被告米袋を使用した販売に関して、不正競争防止法二条一項一〇号(誤認惹起行為)の不正競争行為が認められるのであるから、同号が保護するところの事業者の営業遂行上の有形無形の経済価値その他の利益一般、すなわち本件原告米袋に関する信用、名声、顧客吸引力、表示そのものの価値に対する侵害の存在が事実上推認されるというべきである。現に、原告諸長商店代表者七六頁以下によれば、被告両毛米穀が本件被告米袋に表示と異なる米を詰め販売したことにより、これと極めて類似(前記第二、二1、2のとおり)する本件原告米袋を使用する予定であった訴外群馬県第一食糧株式会社(乙八の二)との取引が頓挫するなど、原告諸長商店が多大な営業上の損害を蒙ったことは明らかである。
次に、不正競争防止法五条一項により推定される損害の金額であるが、本件被告米袋の販売によって得られた被告両毛米穀の利益は、前記一4の各事実並びに第二、三1(一)<3>の括弧内で被告らの反論するところの利益幅によれば、平成七年四月上旬から平成八年六月までを通じて、「コシヒカリ魚沼一等」の米を詰めて販売する毎に少なくとも五〇〇円(五キログラム入り)を下らない純利益があったものと推認され、この限度で前記3のとおり一万五六六〇キログラムを販売したものである。
また、前記3のとおり、残り三九九〇キログラムについては、本件被告米袋に「コシヒカリ魚沼一等」以外の米を詰めたものと見るほかなく、弁論の全趣旨から、平成七年四月上旬から平成八年六月までを通じて証拠上販売価格が明らかでチラシ(甲四、五)の上でも関連性の認められる「コシヒカリ」「新潟一〇〇%コシヒカリ」「新潟米」を平均した品質の米であると認められ、そのような米の仕入価格は、その販売価格(甲四、五によれば、順に五キログラム当たり一七四〇円、二二五〇円、一六〇〇円である。)の平均(一八六三円(円未満切り捨て))を上まわらないのが通常であるから、販売価格三五〇〇円から仕入価格一八六三円を引いた利益一六三七円(五キログラム入り)で、三九九〇キログラムを販売したものと認められる。
よって、被告両毛米穀の利益は合計二八七万二三二六円と認められ、この額が被告両毛米穀の不正競争によって原告諸長商店が受けた損害額と推定される。
(計算式)
1万5660キログラム分について
(500÷5)×15660=156万6000円
利益 販売数量 販売利益
3990キログラム分について
(1637÷5)×3990=130万6326円
利益 販売数量 販売利益
合計販売利益 287万2326円
これに対し、被告両毛米穀は、右推定を破る事情として、<1>販売地域が相違し、競争関係にない、<2>米袋の表示ではなく、永年の信用と営業努力により販売したことを主張するが、<1>については、前述のとおり、米穀商としては同業であって、被告ら主張に係る地理的相違を考慮に入れても、具体的な不利益の存在は明らかであるから理由はなく、弁論の全趣旨によれば、右不利益の算定額は訴外群馬県第一食糧株式会社に継続的に卸売りができなくなったことなどによる損害額を下回らないことは明らかである。<2>につき、前記一1(二)、4の各事実を見れば営業努力等が一定限度認められるものの、同4(三)のチラシが本件被告米袋の商品の独自性(前記1のとおり)を前面に打ち出していることなどに照らせば、推定される原告諸長商店の右損害額を減殺するものとは認められない。
本訴事件の弁護士費用については、本件訴訟の難易度、認容額、その他諸般の事情を斟酌して、相当因果関係のあるものとして、被告らに五〇万円を負担させるのが相当と認められる。
以上合計して、原告諸長商店主張に係る不正競争の責任(前記第二、三1(一)(1))については、三三七万二三二六円の限度で認められる。
以上によれば、不正競争に基づく請求については一部棄却となることから、さらに原告諸長商店主張に係る不法行為の責任(前記第二、三1(一)(2)、予備的請求原因)につき検討すると、以上の検討に照らせば、被告両毛米穀が無断で表示と異なる米を詰め、販売した行為は、商道徳を無視し、明らかに違法に原告諸長商店の営業利益を侵害すべき行為であって、同(2)<1>を肯定することができるものの、同(2)<2>につき、前記一(前提事実)及び関係証拠並びに弁論の全趣旨(民事訴訟法二四八条に係る原告諸長商店の主張を含む。)によれば、その無形損害額が三三七万二三二六円を超えるものとは認められない。
さらに、原告生産農家らの肖像権侵害の責任(前記第二、三1(二))につき検討する。
前記一2及び前記1のとおり、品質の高さ、製造の際の真摯な取組みを訴えかけようとする原告生産農家らが、前記7のとおり、本件被告米袋、チラシを大量に配布され、前記4のとおり表示と異なる内容の米を詰められたことにより、購入した消費者から、袋の表に記載された生産者として、購入した消費者の不興を買ったであろうと考えて、大いに精神的苦痛を蒙ったであろうことは容易に推測され、前記7のとおりの業界紙掲載の事情や、本訴事件に対する被告らの対応その他口頭弁論にあらわれた一切の事情(民事訴訟法二四八条に係る原告生産農家らの主張を含む。)を考慮するならば、原告生産農家らの慰謝料として、各自三〇万円が相当であると認定できる。
三 結論
本訴事件において、原告諸長商店の主張のとおり、原告生産農家らの顔写真入りの米袋と同じ米袋を、被告両毛米穀によって勝手に使用され、表示と異なる内容の米を詰められ販売された事実が認められるので、被告らは連帯して、原告諸長商店に対し、不正競争防止法四条及び民法により、三三七万二三二六円を支払う責任があり、民法の不法行為(商道徳無視)については責任が認められるものの、三三七万二三二六円を超える損害額は認められない。
また、肖像権侵害に関しては、被告らは連帯して、原告生産農家ら(一〇名)に対し、民法により、各自三〇万円を支払う責任がある。
反訴事件において、被告らの主張にはいずれも理由はなく、各請求はいずれも認められない。
(裁判長裁判官 大谷吉史 裁判官 住友隆行 裁判官 樋上慎二)
(別紙)
本訴原告目録
新潟県南魚沼郡六日町字新堀新田二〇五番地
本訴原告 村山朝義
新潟県南魚沼郡六日町下原六五五番地一
本訴原告 中島幸一郎
新潟県南魚沼郡六日町大字宇津野新田四二六番地二
本訴原告 嶋田長治
新潟県南魚沼郡六日町大字宇津野四三七番地
本訴原告 広田邦一
新潟県南魚沼郡六日町大字宇津野新田四九二番地
本訴原告 広田健一
新潟県南魚沼郡六日町大字宇津野新田四八五番地
本訴原告 内山浩明
新潟県南魚沼郡六日町大字宇津野新田五三二番地一
本訴原告 広田五十二
新潟県南魚沼郡六日町大字宇津野新田四五七番地
本訴原告 嶋田信夫
新潟県南魚沼郡六日町大字宇津野新田五一九番地一
本訴原告 嶋田正一
新潟県南魚沼郡六日町大字二日町一三〇番地
本訴原告 山崎弘一
(別紙)
謝罪広告目録
当社は、平成八年八月六日、当社が製作した米袋を有限会社両毛米穀が無断使用したとして、新潟地方裁判所長岡支部に提訴した際、「米袋の表示とは全く内容の異なる『ニセ米』を詰めて販売した」とした。マスコミは、消費者に関連する社会問題との見地から「魚沼コシヒカリでない」、「ニセ米を販売した」と報道しました。
この報道により、有限会社両毛米穀はニセ米を販売したとの世間の誤解を招くことになりました。
しかし、「ニセ米である」との当社の主張は、根拠のないものでありました。
よって、当社の根拠のない主張をしたために、マスコミの誤った報道を招来し、その為、有限会社両毛米穀のみならず、代表取締役小森谷善一氏、専務取締役小森谷義則氏に対し、その信用・名益を毀損し、物心両面に亙る苦痛を与えたことに対し、ここに深くお詫びする次第です。
(別表)
一 原告生産農家らが特別な栽培基準の下で生産した本件コシヒカリの量
(注)「白米換算」は、生産量が玄米で一俵当たり六〇キログラムであることから、精米時の損失を一割として換算した。
<省略>
二 原告諸長商店が東京の小売業者に卸売した本件コシヒカリの量
(注)「年度」は表一で生産された米の年度を示すので、実際に卸売等した時期は、各年度の収穫期以降ないし翌年度の収穫期以前となる。「白米換算」は、卸売量が玄米であることから、精米時の損失を一割として換算した。
<省略>
三 原告諸長商店が本件原告米袋を使用して卸売等した本件コシヒカりの量
(注)「年度」は表一で生産された米の年度を示すので、実際に卸売等した時期は、各年度の収穫期以降ないし翌年度の収穫期以前となる。
<省略>
四 原告諸長商店の本件原告米袋の購入枚数
(注)「白米換算」は、購入した袋が白米を五キログラム詰めるものとして換算した。
<省略>
五 被告両毛米穀の原告諸長商店からの魚沼産コシヒカリ一等米の購入量
(注)「白米換算」は、購入量が玄米であることから、精米時の損失を一割として換算した。
<省略>
決定
原告ら(反訴被告) 株式会社諸長商店 外一〇名
被告(反訴原告)ら 有限会社両毛米穀 外二名
右当事者間の平成八年(ワ)第一九六号損害賠償請求本訴事件、平成九年(ワ)第一八五号反訴事件につき、判決中明白な誤謬があったので、職権により当裁判所は左のとおり決定する。
主文
本件につき平成一一年一二月一三日言い渡した判決中の別紙謝罪広告目録(本決定別紙一のとおり)を本決定別紙二の内容に更正する。
平成一一年一二月二一日
新潟地方裁判所長岡支部
裁判長裁判官 大谷吉吉史
裁判官 住友隆行
裁判官 樋上慎二
別紙一
謝罪広告目録
当社は、平成八年八月六日、当社が制作した米袋を有限会社両毛米穀が無断使用したとして、新潟地方裁判所長岡支部に提訴した際、「米袋の表示とは全く内容の異なる『ニセ米』を詰めて販売した」とした。マスコミは、消費者に関連する社会問題との見地から「魚沼コシヒカリでない」、「ニセ米を販売した」と報道しました。
この報道により、有限会社両毛米穀はニセ米を販売したとの世間の誤解を招くことになりました。
しかし、「ニセ米である」との当社の主張は、根拠のないものでありました。
よって、当社の根拠のない主張をしたために、マスコミの誤った報道を招来し、その為、有限会社両毛米穀のみならず、代表取締役小森谷善一氏、専務取締役小森谷義則氏に対し、その信用・名益を毀損し、物心両面に亙る苦痛を与えたことに対し、ここに深くお詫びする次第です。
別紙二
謝罪広告目録
一、掲載文
当社は、平成八年八月六日、当社が制作した米袋を有限会社両毛米穀が無断使用したとして、新潟地方裁判所長岡支部に提訴した際、「米袋の表示とは全く内容の異なる『ニセ米』を詰めて販売した」とした。マスコミは、消費者に関連する社会問題との見地から「魚沼コシヒカリでない」、「ニセ米を販売した」と報道しました。
この報道により、有限会社両毛米穀はニセ米を販売したとの世間の誤解を招くことになりました。
しかし、「ニセ米である」との当社の主張は、根拠のないものでありました。
よって、当社の根拠のない主張をしたために、マスコミの誤った報道を招来し、その為、有限会社両毛米穀のみならず、代表取締役小森谷善一氏、専務取締役小森谷義則氏に対し、その信用・名益を毀損し、物心両面に亙る苦痛を与えたことに対し、ここに深くお詫びする次第です。
二、掲載条件
掲載場所
紙面社会面に縦四段抜き横八センチメートル
字格
見出し部分、及び原告会社名、代表者名は三号活字、本文は六号偏平活字。